パチ屋であった本当の話、景品窃盗団編
あれはある夏の出来事だった。
4号機全盛期のあの頃、ホールには若い客がわんさかあふれていた時代だ。
4、5人グループで来店しでは、おそらく持ち金をすべて使ってしまったのであろう連中から順に休憩室に溜まりだすという光景は日常茶飯事的な事だった。
そのため、カウンター前の休憩室に数人が貯まり、TVを見ている光景に、私も何も違和感を感じていなかった。
昼の3時を過ぎた頃だっただろうか、カウンターに入っていた女性スタッフから、発狂したかの様なインカムが入る。
『大変です!休憩室付近に置いてあった景品が無くなっています!!』
急にそんな事を言われても、私はピンとこなかった?
『どういう事ですか?』
冷静に返答を返す私。
『とっ、とにかく来てください。。。』
自分のテリトリーであるカウンターのあるはずの景品が消えている事にショックなのか、それとも何がなんだかわからないのか、とにかくその女性スタッフは気が動転していた。
面倒くさいなと思いながらも私は現場に行ってみる。
すると
『!?』
見ると、たしかにものの見事に景品スペースの景品が無くなっているではないか…。
一体どういう事だと思うと同時に、やつらの顔が私の脳裏に浮かびだす。
怪盗集団。
でわなく
こいつらの顔が思い浮かぶ
さっきカウンター前にたむろしていた若僧たちだ。
間違いない。
あいつらだ。
そう思った私は、すかさず外にでる。
奴らはちょうど車に乗り込んで帰るところだったが、そのうちの1人が私の存在に気付くと、一度車が止まった。
シチュエーション的にはこんな感じ。
まるで怪盗キッドがこっちをあざ笑うかの様に去っていく場面だ。
その瞬間に私は確信した。
やつらの仕業に間違いないと、そして、やられた…と。
とにかくそのあとは当時の店長にどやされるのが嫌で嫌で言い訳を考えるのに必死だった。
どうやってあいつらの居場所を見つけ出そうか必死に考えたが、答えが出ない。
被害総額はざっくり見積もって10万位か…
今できる事と言えば、証拠写真や動画を警察に提出する準備をする事くらいだ。
そう思いながらも現実を受け止めきれずに、ホールカメラを見ながらボーっとしていた。
すると信じられない映像が飛び込んできたのである。
さっきの不良グループが再びホールに舞い戻ってきているではないか。
そして従業員に何やら話しかけている。
どうやら、その内容は
『さっき俺たちの車を写真撮っていた奴をだせ。』
と…。
私の事だ─!
何がなんだかわかりませんが千載一遇のチャンス!
すかさずその場に駆け付ける私。
話を聞いてみるとどうやら奴らは自分達が景品をパクった事に対して、私が車種やナンバーを撮って警察に訴えようとしていると勘違いした模様。
『はやく映像を貸せ!』
不良グループたちは私を囲み、オラオラモードに突入した。
これはまずい。
相手は多数、私はひ弱。
ぼこぼこにされてもおかしくないシチュエーションだ。
だが私は引かない。
『盗った景品はどこだ!?』
すると不良たちはいよいよキレだした。
『テメェなめてんのか?早く貸せって言ってんだろうが!?』
危ない。
ドラマでいうパンチを振りかぶっている瞬間である。
ニヤリ…。
『はい、そこまでー』
慌てふためく不良達。
そう、警察だ。
奴らがホールにいるとわかった瞬間、私は110番通報をしていたのだ。
相手は5、6人の窃盗集団、助けて下さいと。
『テメェ、やりやがったな、覚えてろよ!』
という寂しい叫び声と共に、奴らはパトカー3台に捕獲され、内1名のみ逃走した模様。
我ながらではあるが本当にナイスな判断。
この瞬時の判断ができる人間こそ、この業界でなくとも役職を上に上げていける人間。
自画自賛ではないが、たまに思い出すこういう経験は、決していい思い出ではないけれども、今の自分がある中でとても貴重な経験になったと感じたあの夏だった。
数か月後、おそらく彼らの弁護士と思われる人物から示談にしてくれてきな封書が届いたが、もちろん無視。
中には大学生もいた様で、その後の人生に大きな影響を与えていなければいいが、その後の人生に於いて、して良い事と悪い事の判断くらいは一人の人間として判断できる人間となっている事を望みたい。
因みに、パクられた景品は全て車の中にあり、返却された。
被害総額 0円
被害労力 98%
経験値 130EX
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